セミニーズと旧仮名遣い

 やってみてわかりましたが、このセミニーズ遊びは、新仮名だとあまり面白くないんですね。

 旧仮名だと「わゐうゑを」があるぶんだけヒントが多いんです。新仮名だと「あいうえお」と「やいゆえよ」だけでなく「わいうえを」まで「い」と「え」なので、イ段とエ段では「わ」と「を」が完全に隠れてしまいますから、ちょっとヒントなさすぎです。

 あと動詞「思ふ」の活用語尾の「はひふへほ」が意外にヒントになるのに対して、「思う」の活用語尾「わいうえお」はかえってミスリーディングになるんですね。

 たとえば「晴れたる青空漂ふ雲よ。小鳥は歌へり林に森に」ならば「はれたる あをぞら ただよふ くもよ。ことりは うたへり はやしに もりに」で、たとえばア段にすると「へれてれ えゑぜれ てでえへ けめえ。けてれへ えてへれ へえせね めれね」で綺麗に納得がいきます。

 しかしこれを新仮名で表記すると「はれたる あおぞら ただよう くもよ。ことりは うたえり はやしに もりに」となり、エ段にすると「へれてれ ええぜれ てでええ けめえ。けてれへ えてえれ へえせね めれね」となります。「えゑぜれ」が「ええぜれ」、「てでえへ」が「てでええ」、「えてへれ」が「えてえれ」になっている分だけヒントが減ります。

 また一面これをア段でいくと、「ただよふ」は「ただやは」ですが「ただよう」は「ただやわ」になり、「うたふ」は「あたは」ですが、「うたう」は「あたわ」になります。この「わ」は唐突かつミスリーディングですよね。ふだんわれわれは新仮名の「漂う」や「歌う」や「思う」の「う」がワ行の「う」だということを意識していないからそうなるわけです。