セミティック・ジャバニーズ(略してセミニーズ)

 唐突ですが、アラビア語の文字は子音しかないそうですね。小学館の百科事典によると、

他のセム語諸文字と同じく、アラビア語は主として子音のみを記し、母音およびその他の判別記号は必要に応じてのみつけ加えられる。

 ヘブライ語もそうだから、神さまの名前が「エホバ」だか「ヤハウェ」だか、字面だけではわからないというのはご存じの通り。

 本当にそれで読みとるのに困難を感じないのでしょうか。

 日本語でいえば、子音しか書かないということは、たとえばア段の文字ですべての音をあらわすということに相当します。

 ためしにやってみましょう。最初は朔太郎の詩。エ段でいってみましょう。旧仮名遣いです。

へれんせへ えけてせて えめへでめ
へれんせへ えめれね てへせ
 せめてへ えてれせけ せべれゑけて
  けめめねれ てべね えでてめん。
けしぇげ えめめてゑ えけてけ
 めでえれね めでね えれけけれて
ゑれへてれ えれせけけてゑ えめへめ
  げげてね えせね せねねめ
えれゑけけせね めええでれ けけれめけせね。

 驚いたな。意外に読めますね。「えけてけ」、「けけれめけせね」あたりが笑えますが、やはり韻律がしっかりしているからちゃんと詩になっています。

 こんなのはどうでしょうか。調子の高い散文です。ウ段。新仮名です(というか、私は字音仮名遣いがダメで、みなさんもたぶんダメでしょうから、旧仮名でも字音は新仮名にします)。

すんるふ ぶんぬんぬゆっつ むつむるるるくつう むづくるふっす、ぐうじゅつふ ぶんぬんぬゆっつ ううするるくつう むづくるぬずむ。くつつふ つむう ぐむうぬるすむるつむぬ ぐくぐうぐ むっつむすむくづううぬ ふうすするつくつぐうっつ。うむゆ つすくつぶう つっくんくうきゅうぬ づくすんゆる うぶうくうすくつう つぬぬすんしゅつくぬる むんしゅうぬ すつずつぬるゆうきゅうづうる。ううぬむぶんくふ くぬゆうきゅうぬううず するぬくつうるつむぬうむるつ。

 ヒントは最後に近い「ううぬむぶんく」でしょうか。次は茂吉の歌。旧仮名。

はたはさら わがまたからさ さんさんた からはかなたら わがまたからさ

まがまがは さかさらなまな たたまだな はばかやはばな ならなからかま

 前の歌は『赤光』で「さんさんた」、後の歌は『白い山』で「まがまがは」がヒントでしょうか。「からかま(けるかも)」が笑えます。

 最後は芭蕉の句。旧仮名。

なたかさや たはまなだまな やまなあた

いりいみい しぢにいきちひ いみにぎひ

すづくすゆ うふぬすむうる すむぬくう

 ああ、これがいちばんの難問ですね。何しろ短いからデータが少ない。ヒントとして季語に相当する部分をあげておきます。それぞれ、「なたかさ」、「いみにぎひ」、「すむ」です。

 うすむつ(お粗末)。間違いがあったら教えて下さい。