リデル・ハート『戦略論』の翻訳いじり(続き)

 引き続き、リデル・ハート『戦略論』の訳本(1971年刊)を回顧して嫌味を言っています。

  • 121ページ。「その他の[スペイン以外の]地域での成果は、不幸にも小であったが、それは一つには、この戦争の間において英国が大陸の連合諸国と行った協力が直接的であったためであり」。原文は、"The effect produced in Spain was in significant contrast with the slight results, indeed the unhappy results, produced on the one hand by her attempts at direct coo-peration with her Continental allies during these wars, ..." リデル・ハートだからといってそんなに「直接的」を目の敵にしなくてもいいのに。ここは前後関係が原因・結果にはなっていません。改訳案は「スペインであがった成果に比べると、ナポレオン戦争の間にイギリスが大陸の同盟諸国と直接に協力して行った企ての成果は、比較にならないくらい小さなものであり、実際のところ成果と呼ぶにはあまりにも情けないものであった」。