リデル・ハート『戦略論』の翻訳いじり(続き)

 引き続き、リデル・ハート『戦略論』の訳本(1971年刊)を回顧して嫌味を言っています。

  • 124ページ。「遂にスールが荒涼たる山地を北へ越えてガリシアへ強引な退却を行なった際には、スールの軍は損害を受けて疲労困憊し、戦闘のためのバランスをすべて喪失していた」。後半の原文は、"his army had suffered loss and exhaustion out of all proportion to the fighting." リデル・ハートだからといってわざわざ「プロポーション」を「バランス」と訳さなくてもいいのに。改訳案は示すまでもありませんが、「スールトの軍団は、実際の戦闘の規模の小ささに比べれば間尺に合わないくらい大きな損害と疲弊とをこうむっていた」。